明日、ついに魔王城に向けて旅立つ。
勇者かのるすはベッドの上でまんじりともせず、夜空を窓越しに見つめていた。
何を隠そう、ビビっていたのである。
魔王討伐だなんてとんでもないことをやることにしてしまったと思いながら・・。
とはいえもう引くに引けない状況である。
王さまに誓ってお金ももらってしまったし、もうひとつ目的もあるし・・。
これで反故にしたら逆に牢獄に入れられるに違いない。
ためいき混じりに、ギターを手繰り寄せ、一曲弾いた。
<♪MOONLIGHT・・なぜに君、憂鬱?>
魔王討伐に決まってるっしょ・・。
その時、月が窓枠の中に入り込んできた。まん丸だ。
そうか、今夜は満月か。
月をじっくり眺めるなんていつぶりのことだろう。
とても大きく、黄と白の中間色の月。美しいな・・そう思ったとき残響のような声が外から聞こえてきた。
<勇者かのるすよ、我が月の声をききなさい>
<あなたは私の力を使うことができる稀有な存在なのです>
<苦境におちいったとき、囚われのネイビーブルーのクリスタルに祈りなさい>
<クリスタルは我が月の力を感じて応えるでしょう>
<案ずることはありません>
<さあ、ゆくのです>
ハッとするとそれ以上声は聞こえなかったが、月は変わらずに安らかにかのるすの顔を照らしていた。
不安が消えたと言えばウソになるけれど、かのるすは勇者として自覚を新たにした。
出発はまもなくだ。
次回「EPISODE #04 旅立ち」につづく!
ムッシュより
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