06 旅の武器商人は商売上手 ~勇者かのるすの冒険/INs°025

猪の魔物の大群に取り囲まれた勇者かのるす。
旅の序盤で早速万事休すか!

と、そのとき!

高速で回転するブーメランが魔物たちの群れにブンブンと飛び込んでいき、魔物たちの首を次々にはねていく。敵はあっという間に全滅した。

助かった!

生きた心地がしなかったかのるす。
やっぱり武器は町を出る前に買っとくべきだったと後悔したが、後悔先に立たず。
でも、助かった。みたい。

「よお、あんちゃん。命拾いしたな。俺は行商のラスタだ」

山男みたいにガタイのいいおっさんがかのるすをニヤニヤと見ながら近づいてきてゴツイ手で握手した。

「そんなボロ刀じゃ、この先、命がいくつあっても足らんぜ。魔王のとこ行くならなおさらな。俺のブーメランを見たろう?攻撃力バツグンだぜ!どうだい、俺から武器防具を買わないか?安くしとくぜ」

どうやら武器の行商をしている男だったようだ。なぜ、武器屋というととかく「だぜ」口調なのか、かのるすは気になった。
彼らは、旅人、特ににわか者の勇者たちを魔物から救っては武器を売りつけている・・らしい。なんともうってつけの実演じゃないか。まんまと助けられた。

「よーし、話は決まりだ。ここは旅の武器防具屋だ。何を選ぶんだい?」

値段表を見てしばし、悩むかのるす。
・・どれも安くないから。

「ま、ここは町じゃないからな。いわゆる山の上価格ってやつだよ。言い換えりゃ、命の値段よ。わかるだろ?それでも俺なりに精いっぱいベンキョーしてるんだぜ。で、どれにするって?この機を逃すとあんたは魔王の顔も拝めんぜ、誓ってもいい。・・うむ、オーロラソード(剣)とワンダラストアーマー(鎧)だな。締めて1000イルニェだ。いい買い物したな!ほらヨ!袋はいるかい?すまないが最近袋はエゴエコ法案で有料義務化されたんだ」

袋なんかいらんわい!!

ともかく、装備してみる。
なんだか強くなったような・・気がする。薄くなった財布と引き換えに。
結局、王さまからもらった軍資金は底を尽き、もともと持っていたわずかな銭しか残っていない。街で買っていれば・・。

「じゃ、がんばれよ!まいどあり!ってまた会えたら言うセリフだったな。へへ。また会おう。お互い生きてたらな」

別れ際、行商のラスタはこの先のダンジョンを抜ければ魔王城へ行けるらしいぜ、と情報をくれた。

ダンジョン。

魔物たちがより多く巣くっているという話だ。やだなあ。
財布はすっからかんになってしまったけど、ま、不幸中の幸いだな、ツイてたんだ、とかのるすは思うことにした。
少々セコイところがあるが、諦めもいさぎがいい性格なのであった。
彼の楽観主義なところは、魔王討伐の旅のなかで、かのるす自身を多々助けることとなった。

ムッシュより
fFcanorusのYouTubeページ[チャンネル登録]すると、新しいヴィデオのプレミア公開の通知がいち早く届くよ。作品制作の励みにもなるので、ぜひご登録よろしゅう!
ビューティフルでヤミツキなサウンドをキミにイチバンにお届けサ!