10 魔王城潜入 ~勇者かのるすの冒険/INs°029

タランチュランのあとをついていくと、長い登り階段があった。
かのるすはその階段を登りながら、気分が悪くなってきた。
イヤな気配が満ちている。階段を登り終えると、そこには黒い金属製の大きな扉があった。

「案内はここまでや。あとはひとりでいっておくんなよ」

タランチュランはかのるすの頭上から呻くように言った。
相変わらず、言葉遣いが定まっていない。

「俺みたいなもんでも、この先はいきとうないからな。ズらからしてもらう」

そう言い残して姿を消した・・。

ここまで来たら、魔王ゴンゴルゾーラを倒し、ネイビーブルーのクリスタルを取り戻すだけだ。
決意も新たに、かのるすは鉄扉を両手で押し開けた。

ゴゴゴゴゴゴゴ。

深い闇で先がよく見通せない、まさに迷宮が続いていた。
これが、魔王が住む城か。

かのるすは吸い込まれるようにドアの先へ、足を踏み入れたのだった・・。

魔王城は迷路のようにあちこちに枝分かれした通路があり、またそれはどこも同じようで、さきほど通ったところをグルグル回っているような錯覚に襲われた。

静かだ。魔物は襲ってこない。
とはいえ、嫌な気配が満ちている。油断はできない。
気が付けば、かのるすは汗だくになっていた。
ここはとてもひんやりとした空間なのだが。喉も乾く。水が飲みたい。

どれほどの長い時間、彷徨っていたのだろうか?
ジリジリとした時間が続く。

頭上を見上げると、ところどころ天窓があるのだが、真っ暗で何も見えない。
外は夜なのだろうか、でもそれにしても暗すぎる。

時間と空間の感覚を失い、息苦しさを感じていた。
そして、果てのない静寂。ところが、

「おい」

声を落としてこちらに呼びかけるような声がした気がした。

「こっちだ」

ムッシュより
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