「おい、こっちだ」
声のする方へ慎重に歩み寄った。敵?・・いや違う。
小部屋への入り口があった。
「やっときてくれたか。わが・・息子よ」
薄暗い明かりの部屋には、かのるすの父・かの蔵がいたのである!
「お前も勇者として腕を上げたのだろう。だからここにいる。ほかの奴はみんなここまでたどり着けなかった」
そう、旅の重要な目的・・魔王討伐に出発して以来、行方知れずだった父親を探し出すことだったのだ。
この目的が、ついに果たされた。
かの蔵は魔王との対決にそなえ、魔王城に潜伏し続けていたのである。何年も・・。
髭がもじゃもじゃで最初誰だかわからなかった。おまけに周りが暗すぎる。
「この城の構造はだいたい把握した。食料の保管庫の場所もな。住めば都・・とまでは言えないがなんとかここで寝食をしていたのだ。辺りをうろちょろしてた魔物もあらかた片付けた。一気に終わらせたかったが、魔王の部屋に入る手前で結界が張られていて進めないでいる。ついてこい」
ひときわ大きな鉄のドアの前に鈍い音を立てる電気が流れた、まるで有刺鉄線のような結界が張られていた。
「この結界を無力化することは俺の魔法を使えばできると思うが、無力化したまま戦うことは明らかに不利で間違いなく負ける。それだけ強力な結界で、おそらくこの奥でもそれは張られているにちがいない。お前は魔法が使えないだろう。だから、俺が結界を無力化しているうちにお前が魔王の部屋へ入らなくてはならないのだ。わかるな?つまり、魔王と戦うのはお前、ということになる。さあ、いくぞ」
かの蔵はかのるすの答えを聴く前に駆け出していった。
チョット!!
かのるすは、父は昔から人の話を聞かない人だったことを思い出した。
彼の鉄砲玉の性格を苦々しく思いながら、しぶしぶあとをついていった。
「では、やるぞ!」
かの蔵は目をつむって呪文を唱え始めた。
手から黄色い光がほとばしり出る・・。
結界が消えた!
よし!今のうちに中へ入れ!!
かの蔵は叫んだ。
えーい、もうどうにでもなれ!!
駆け出すかのるす。
「誰だ?私の祈りを邪魔するものは?」
太く低い声が威嚇してきた。
「かのるす!ゴンゴルゾーラのお出ましだ!注意しろ!」
ムッシュより
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