A Honest Love/INs°140

熱狂とは違うが、ある種の喝采があった。
静かな賛美。居心地の良い空気。
オーディエンスは誰だか知らない2人組の演奏を受け止めた。

スウェルトは演奏を終えると、MCをした。

「サンキュー、調子に乗ったついでにもう一曲やっていいかな?」

カノルス、スポンサーのツケってことで、キミに一曲託すよ。
僕は舞台をここで降りる。たくさんあるんだろ、新曲が。

少し気後れしていたものの、ムッシュ・カノルスは満ち足りていた。
かつてこれほどまでにステージの上が居心地いいと思ったことが無かったのだ。

彼はピアノの鍵盤の上に手を置くと、何も考えずに演奏を始めたのだった。
心のままに。ハートのままに。