この部屋には不思議な窓が付いている。
何が不思議って外が全く見えない。
部屋の中の部屋。
壁紙はマットな質感で、触れると誰かの肌みたいなぬくもりがある。
すごくデッドな音場はどんな低音も吸い取ってしまう。
そして不思議にもこの部屋にいると僕は踊りたくなる。
もちろん大した踊りじゃないけれど。
そんな雰囲気。
そんなムード。
でも、そろそろ僕はここから出ていきたい。
少し外を歩き回りたいのだ。
部屋のなかをうろつくにはここは狭い。
グルグルと自転する星のように。
世界がどうなってしまったのか、知りたいから。
不思議なこの部屋、このムード。
だけどドアは見当たらない。