2018年11月某日。
初めて伊勢神宮を訪れた。
愛知・犬山に住む友人夫婦を訪ね、彼らと一緒に三重県・伊勢市まで出掛けたのである。
犬山から伊勢までの道中、ご亭主の愛車VOLVO240の助手席に乗せてもらった。
ワインレッドのボディ、武骨な鉄板がむき出しの、これぞ工業製品と思わせるたたずまい。しかし、見た目からは意外に感じるソフトな走り。
彼曰く、ときどき機嫌を損ねるらしいけれど、この日は上機嫌で走ってくれた。
一路、三重・伊勢神宮へ。
渋滞にはまることなく2時間ほどで到着。
(友人曰く、亀山JCTはいつも大渋滞だとか)
道中、まだ稲刈りをしていない田んぼが結構あった。
紅葉もまだ序盤、というか始まっていない感じ。今年は特別遅いのだろう。
朝4時半に家を出た甲斐あって、午前10時ころには到着できた。
一番込み合う内宮(ないくう)の前に、少し離れた場所にある別宮(べつぐう)の月夜見宮(つきよみのみや)へ。
他に誰もいなくて、ゆったりとした時間が流れていた。
天気が良くてラッキー。
お宮の周りは車の往来が激しくやかましいが、境内に足を踏み入れると深い静寂に包まれていた。それは単に森に囲まれている、というだけではないこのお宮が放つ、穏やかで神聖な空気がそうさせていると感じた。
藁ぶき屋根の宮社は、まるで人が住めそうな家のよう。
宮社は20年ごとに建て替えられており(式年遷宮)、その建て替えスペースとして左隣が空いているのだという。ここだけでなく120以上ある宮社すべてが式年遷宮の対象であり、1300年にわたって、たゆまず行われてきた。
友人は建築家。彼曰く、
「使われている木は木曽ヒノキの一級品だし、これは高いよー」。
20年ごとに建て替えていて、材木の生育は間に合うんだろうか?
だが、逆に言えば神聖なものを大切にしようという意識のあらわれ。
日本にまだこういう美意識、観念が残っていると知り、驚きとともにうれしくなった。
このあと、内宮の境内へ。やはり普通の神社とはスケールが違う。
こんなに広い通りも年始などはお宮参りでぎゅうぎゅうに人がひしめき合うというから驚きだ。
「一生に一度はお伊勢参り」と江戸時代の人々が言ったのも頷ける。
お伊勢さんの境内へと続く一本道は、赤福本店のある「おかげ横丁」。ここは誘惑だらけ。この日は平日ということもあって、食べ歩きが楽しめたが、週末はそれどころではない混雑だとか。なんともラッキー続きの参拝であった。
友人の運転に甘えて、昼から一杯。いや、二杯。
定番の松坂牛串はもちろんのこと、B級グルメ万歳。
どうしても、花より団子になってしまう。
普段食べ歩きなどしないから、余計に燥いでしまうのだった。
お伊勢さんからの帰り途中、鳥羽市にある「海の博物館」に立ち寄った。
もう日暮れが近い。
閉館30分前になんとか駆け込みで入った。内藤廣さん設計のこの博物館は言われてみると確かにちひろ美術館と雰囲気が似ている気がする。
この博物館一番の見どころは、今はほとんど使われることのない木造船の保管庫。圧巻です。
ボルボ氏は元気に走り続けてくれ、無事愛知に戻ってきた。
食べてばかりの旅は、最高に楽しい。