あくる朝、ムッシュはパチリと目を覚ましました。
とても前の日までクタクタだったとは思えない、漲る元気を感じていました。
この森の持っている力が彼に活力を与えているかのようです。
「さあ、修道院へ」
身支度をして、歩き出すとすぐに鍾乳洞への入り口を見つけました。
この鍾乳洞は氷のように透明、でも鮮やかなブルーの石でできているのです。
入り口はとても小さく、彼が身をかがめて中に入るのですが、入ってすぐに頭上数十メートルもの広い空間が広がっています。ひんやりとしていますが、寒くはない。風はないが、空気が澄んでいる。薄暗いけれど、鍾乳洞は太陽の光を通すのか足元が青白く照らされ、ちゃんとみえる。
そして、彼はこれまでの道中に感じていた例の香りが前よりも強くなっているのを感じました。この香りは修道院から発せられているのかもしれません。
鍾乳洞の中には動物や神様のカタチを模したような鍾乳石がいくつもありました。
立派な角をもった鹿、恐ろしいまでの美貌を備えた半裸の女神、それに仕える悪魔などなど。数十メートルはあろうかという巨人と、剣を持った屈強な戦士が闘っているように見えたりも。
ムッシュは次第に自分の心が穏やかになるのを感じました。
不安とか恐れ、そういった感情は消えてしまい、この鍾乳洞が彼を護ってくれるバリアのように感じられたのです。
彼は止まることなく、でもゆっくりと歩き続けます。
道は入り組んでいましたが、迷うことなく進む方向が彼にはわかったのです。
しだいに、出口から漏れてくる外の光が目に留まりました。