脳裏に焼き付いて離れない /INs°095

ふと、足を止めると、木々の放つ香りがあたりに立ち込めていた。

その香りで、幼かったあの頃がフラッシュバックした。

あんなにも、時はゆっくりと流れていたのに。

それを懐かしむとともに、苦しい気持ちにもなった。なぜ?

幼い私が目線の向こう、雑木林の中に立って、私を見つめていた。

私は再び走りだし、彼のすぐ傍をすり抜けた。

今が、何より大切なのだ。

いつにおいても、今が。