コクーンの中の小宇宙

気が付くと、無音の世界にいた。

あたりは暗く、何も見えない。不安になって思わず「あっ」と声を発してみたはずだが、暗闇の中、その音はあたりに響くことなく虚しく消えた。一寸先も見えないが、周りは分厚い絨毯のような膜で覆われているようだ。私の声もその膜に、ひとしずくの水のようにあえなく吸い込まれてしまったのだろう。

それはそうと、ここは暖かく、穏やかな気持ちになる。
昨日までの争いが嘘のようだ。もうあの場所へは戻りたくない。
このまま眠ってしまってもいいかと思い始めたころ、闇の中に白っぽい光が漂い始めた。
距離感がつかめない。
手を伸ばそうと思ったが、私には手がなかった。いや、手だけではなく、身体そのものが、あるべきところにはなかった。

私は無?だけど思考はしている。どうやって?
なすすべがなく、私は諦めて、ただ目の前の真っ暗闇を見つめるしかなかった。

光たちはゆっくりとうごめき、少しずつ増殖し始めたように思われる。
流れ星のように光の軌跡を描くものもいる。

そんな光の営みを眺めるのが楽しくなってきた。
そうだ、いつまででも見ていたい光景だ。