Crescendo /INs°103

次第に足取りはしっかりしてきた
いつの時代も私は迫害に遭ってきた
時には刹那的に自分を放棄したこともある
あれから幾星霜
いや、幾世代を経たことか

だが、今や
次第に速度を上げ、トルクは力強く、規則的な音を立て始めた
もう止まらなくてもどこまでも行けるに違いない

そうして

鳥になりたかった人間は、崖の上から飛び立ち、ようやく墜落ではなく飛翔を手にしたのだ

初めての体験だ
風は初めて、味方となった

そうだ、私のために吹いている風だ
なぜ今まで吹くことが無かったのか

それはきっと
自分を信じ切れていなかったから
迷いを断ち切れなかったから

「そうだったのか」
そう、私はつぶやいた