月に問うてみよ、夜に吠えてみよ/INs°006

また気が付けば、満月のときが巡ってきていた。
何度目の満月であろう?
私が産まれてから。この世界が始まってから。

この無限にも思えるループの中にも、きっと微妙な変化がある。
我々もその影響を受けながら、わずかにだが変化し続けている。

たとえば、月はオレンジ色に灯るときもある。ピンク色にも、青白くも。

その月光の色合いは、夜の街に、森に、海に、人に、と薄い透過レイヤーを掛け、それぞれの色味に微妙に変化をもたらす。

人びとは、そのことを意識することはない。
だけど、その影響と知らずに、レスポンスを示す人や自然が存在する。

祝福であり、ときに混沌である。

おおかみが月に向かって遠吠えするさまを真似てみる。
満月がもたらした変化に、呼応するように。

滑稽だが、人間がやってみても案外しっくりくる。
だが、誰かに聴かれてはならない。

瞳を冷たい月の色に染められた人たちが、それをやめさせようと通報するに違いないから。

ムッシュより
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