ギターの調べ/Guitarra Seco /INs°116

ムッシュは焚火の前に座りながら、ギターを取り出しました。
瞳に焔がメラメラと映り込み、彼は少し放心しているかのようです。

やがて何も考えなしに、ただギターを弾き始めました。
自分がどんな曲を弾いているのかもわからないくらい。

でも、なぜか饒舌にギターはメロディを奏でたのです。

しだいに、ツウィレ川の向こう岸から、獣のような鳴き声が聴こえてきました。
その声はいくつも呼応しながら、あちこちから聞こえだします。

だけど、ムッシュは夢中でそれでどころではないようです。
ただ、ギターに体と心をゆだねて弾いているのです。

小さな光のカーテンが木々の間を乱舞し、踊りだします。
ギターに合わせて、リズムを合わせ、カラフルに。
たくさんの精霊たちがその姿を現しては、消える。

彼は見ているけれど、見ていない。
ただ、音と世界をつなぐ触媒として彼は存在しています。

森の中で、そんなささやかなフェット(宴)が一晩中繰り広げられたのでした。