起動ボタンにうっすらと積もった埃を親指の腹で拭い去り、今一度、イグナイトさせる。
誰でもない。そう、私自身の意志で。
意図せずに、突然シャットダウンさせられてしまうことも、長い人生、ままあることだ。
わかっている。
だが、このボタンのいいところは、何度でも押し直すことができること。さあ、勇気を出せ。
イグニッション・オン
スイッチが入ると各セクションには順次、電気が流れてゆき、スターティングモードに入る。
(よかった、まだ壊れてはいないようだ。内心冷や冷やしていたのは表情に出さずに)
ランプが灯り、ゲージが振れる。
カラフルな音色の動作音が鳴り、空気を振動させる。
それから、それから。
チャクラが光を反射する鏡のように、空に向かってシグナルを送り始める。
神々が乗ったサテライトが信号を受信し、{GOサイン}を送り返してくる。
「私は、戻りました。どうぞ頼みます」
暗号化されたメロディ。
起動は軌道に乗り、輝度を上げていく。
初動がうまくいき、誰彼構わず抱きしめたい気持ちになる。
「やったぞ、成功だ」
よし、じゃあ、ここからまた始めようか。