Astronaut Sickness/INs°369

地球から離れてみると
自分がかつて
本当にそこにいたのか
不確かな気持ちになる

そこには
家族がいて
生活があった
見慣れた街並みと
いつもの顔ぶれ

そこにいた時には
それらからすべて
離れることになるとは
思えなくて

今は瞼の奥の記憶にだけ見える

劣化した古い映像のように
輪郭はぼやけ
にぎやかな笑い声の名残りが
残響と共にフェードアウトする

二つの黒目の中には
地球がすっぽりと納まっている

ここは静かだ
遠くで星が流れるのが見える