Ketatamashi Epilogue/INs°412

戦火が街を焼き尽くし
クリスマスは台無しになってしまった

蠟燭の火をフっと吹き消すように
灯り消えた街かど

準備されていたクリスマスマーケットや
イルミネーションの設営も準備途中で放棄され
過去何百年と続いてきたこの街のクリスマスの迎え方とは違っている

幸い、街の人々はすでに避難し終えていたのだが
無人となった街なかでは
どこからともなくやってきた盗賊どもがノサバリ
空き巣を働いていた

廃墟となった教会はその荘厳な姿見る影もなく
今や亡霊たちの住処となってしまった

丑三つ時となり静まり返ったこの寂しい街は
もはや同じ場所ではなくなってしまっている

だが、ひとつだけ変わらず同じことが起きた

あのやかましい音楽が、聴こえだしたのだ

そうだ、ケタタマシだ

青い装束に身を包んだジプシーたちが
楽器を手に大挙して押し寄せてきた

街の大通りには瓦礫が山積していた
だが、彼らはそれをものともせず乗り越え
高らかに音楽を奏でる

とにかくやかましいが
それはこの街へのレクイエムのようにも思われた

この街が一度死に
再び息を吹き返すのを
音色に乗せて願っている・・のかも

それから
街の中心にあるヘリオス広場へ一行がついに辿り着き
音楽が大団円を迎えた

すると彼らは演奏をピタッとやめ
楽器を空へ放り投げる

ガシャん、バリン、ドドん、ガララ

楽器たちが儚くも砕け散るのを
彼らは声も出さずに見つめていた

ケタタマシの一人が
前に進み出てヘリオの太陽像に手をかざす

ヘリオの巨神は空に両の手をかざしている
その手の先から突如として火球が立ち上り
大空へ上がっていく

やがて夜空にはカラフルなオーロラが
あたかもバウムクーヘンのように
幾重にも折り重なり空を彩る

雪が降りだした
最初は小さな粒だったが
次第に見上げていられないくらいの大粒にかわった

廃墟の街の肌を真っ白に染め上げてゆく
傷が隠され、シルクのドレスの様相となったとき

ケタタマシの姿はもう、なかった