IONA(イオナ)/INs°558

そう、彼は生きていた
薄汚れてはいたが、逞しく、筋肉には艶があり
目にはキラリと光を宿してる

彼は自分で作り上げた小さな船に乗っていた
風に乗り、波に乗り
鋭いスピードが出る

彼のかつて住んでいた街では
彼は死んだものとされていた

かつて乗っていた大きな船はセイレンに惑わされ
沖で座礁し沈没したからだ

多くの乗組員が行方しれず

彼もその1人だった

彼は幸い生き残ったが
記憶は失われていた

一度、海で死に
もう一度生まれ変わったということかもしれない

船を作る技術などなぜ知っているのか
彼自身もわからない

まるで誰かが彼の身体に乗り移ったように
彼は新しい人生を生きている

そして海で旅を続けている
何かに導かれて
向かうべき場所は
魂が知っていた

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