ああ、思い出したぞ
あの海に飲まれた時の、記憶
セイレンが現れる少し前のことだ
俺たちの船は見たんだ
神々しい何か
月の光が、真っ黒な闇雲に覆われていた空を突き破り
何筋もの柱となって海に突き刺さっていた
その柱たちは次第に海の上に宮殿のような建物を築いた
そうだ、黄金の宮殿だ
その宮殿に向かって俺たちの船は前進していた
潮の匂いに混じって
不思議な香りが立ち込めていた
宗教儀式を行うときに焚くような香り
その香りのせいで
次第に俺たちは恍惚とした気持ちになり
それまで嵐の恐怖に怯えていたが
何も怖く無くなっていた
黄金の宮殿は俺たちを招き入れる
とんでもなく大きな扉に船に乗ったまま招き入れられ
見たこともない絢爛な部屋に通された
そこには誰かがいた
というか姿は見えないが気配のようなもの
それはきっと神様と呼んでいいものだと思った
だけどそのあとは・・
・・黒いルリノアが全てを覆い尽くしたんだ