Shining Chapter(輝ける章)/INs°576

彼は非難されるのを承知で
危険な曲を書いた

譜面にそれを記しているとき
彼は命を落としそうになった

紙面に踊る音符たちが
彼の魂を乗っ取ろうとしたからだ

それをストリングスの響きで跳ね返しながら格闘し
ついに書き上げた

劇場の真ん中で
この”輝けるチャプター”を演奏した時

聴衆たち、それを聞く役人たちは
どよめき困惑した

目を釣りあげて金切り声を上げる者
泡を飛ばしながら非難を浴びせる者

彼らに潜む闇が
つまびらかに露呈した
その羞恥心で誰もが我を忘れた

彼は袖からおどり出てきた
屈強な男たちに取り押さえられて
舞台上から消えていった

彼の顔には満足そうな笑みが浮かんでいた

「・・また新しい章が始まる」

そう囁いたのを、誰も聞いてはいなかった

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