彼は非難されるのを承知で
危険な曲を書いた
譜面にそれを記しているとき
彼は命を落としそうになった
紙面に踊る音符たちが
彼の魂を乗っ取ろうとしたからだ
それをストリングスの響きで跳ね返しながら格闘し
ついに書き上げた
劇場の真ん中で
この”輝けるチャプター”を演奏した時
聴衆たち、それを聞く役人たちは
どよめき困惑した
目を釣りあげて金切り声を上げる者
泡を飛ばしながら非難を浴びせる者
彼らに潜む闇が
つまびらかに露呈した
その羞恥心で誰もが我を忘れた
彼は袖からおどり出てきた
屈強な男たちに取り押さえられて
舞台上から消えていった
彼の顔には満足そうな笑みが浮かんでいた
「・・また新しい章が始まる」
そう囁いたのを、誰も聞いてはいなかった