みなさんこんばんは、こちらは「サウンド+ヴィジョン誌」編集長のタナカ・ソウヂがお送りするWooTube(ウーチューブ)チャンネルです。 今回は感染ウイルスが世界中に蔓延してしまっているこの状況をかんがみて、自宅スタジオからお送りします。
今夜は「カノルス」のゲストミュージシャンとして参加されているサックスプレーヤー、セニョル・スウェルト氏にオンラインで現状の制作状況について語っていただきます。
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タナカ:どうもお久しぶりです、スウェルトさん。今回は世の中がこんな状況のなか当番組のインタビューに応じていただき感謝しております。こちらの声は聞こえますか?
スウェルト(以下、太字) :はい、よく聞こえますよ、タナカさん。
— それはよかった。ウイルスの感染が世界中で広がっていますが、スウェルトさんのお住まいであるウィスランは今どのような状況でしょうか?
そうですね。色々影響は出ていると思いますけど、僕は相変わらずの普通の暮らしぶり、といってもいいのかな。周りの人も落ち着いているように思いますね。もともと人口が少ない国だし、人が密になるのは少ないのでそれがよいのかも。
— そうですか。このところ活動の状況があまり見えないカノルスさんですが、レコーディングの進捗はいかがでしょう?
(咳ばらいをして) え~前回のリリースが、えっと、昨年の7月で、もう1年以上経ってしまってますね。ハハ、相変わらず彼はマイペースですよね。僕も今回も参加していますが、何度もやり直してる状況で・・。今世の中はこんななので、リモートでレコーディングしていることもあり、なかなかどのくらい進んでいるかは僕ら自身もわかりにくくて。それでも、ようやくゴールは見えてきているのは確かだと思います。
今回は3曲同時リリースを予定しています。
— そうですか。前回の「V-E-S-T-A-L」「Dos Voulntz」で2曲リリースでした。イルニェシュタンの続編である「ENCORE(アンコール)」は2曲ずつリリースされるものだと思ってましたが、違うのですね?
ええ、その時々で変わると思います。その辺りのコンセプトは彼の頭の中だけにしかないのでわかりませんが、今回についてはそれら3曲が彼にとっては切り離せないってことなんだと思います。
— なるほど。その3曲についてもう少し具体的に教えていただけないでしょうか?
うーん。詳しいことは今まだ出来上がってない状況で話すべきではないかもしれませんが、まあちょっとだけならいいでしょう。みなさんをお待たせしているわけですしね。今回はインストルメンタル1曲と歌モノが2曲です。このところカノルスはクラシック音楽やラテン音楽などに興味が向いているようで、ロックサウンド的な手法から離れたがっているように思います。
— ラテン音楽ですか?具体的には?
ボサノヴァっぽいっていうのかな。ボサノヴァっていうと南国のビーチで陽気に、というイメージがあるかもしれないけど、そこはカノルスらしく「陰」な部分がサンバビートの随所に隠れています。彼に陽気な曲を作るのはムリだとみなさんもご存知でしょう?
— そうですね、確かに(笑)それはそうと、スウェルトさんは前作、Dos Voulntzのプレイが冴えてました。今回はサックス以外にも吹かれておられるのでしょうか?
僕は例によって吹きモノ全般って感じですね。トランペット、トロンボーンなんかが多いかな。そういう楽器がだんだん多用されるようになってきているのも彼がそういう嗜好に向かっているからだと思います。あ、そうそう、今回はちょっとだけどフルートまで吹きました。フルートなんて経験なかったんだけどカノルスのムチャぶりで!
— ハハハ。それだけますますスウェルトさんの役割が大きくなってきていると?
どうでしょう?僕の本業はまた別なんで、あんまり音楽活動に引っ張られるとちょっと困るかなというのが正直なところです。一度音楽を捨てた身でもあるし。
— そうでしたね。スウェルトさんはカノルスさんとのバンド「ファズ・フォミルダーブル」が解散したあと、しばらくは音楽活動から身を引いておられたのでした。それからは故郷のウィスランに戻られてご実家の家業であるARØM(アロム)蒸留所を継がれたのでした。本業の方は感染症による影響はいかがですか?
もちろんありますよ。でもとりあえず、そこは国が補償を出すことにしてくれたので助かってますね。とはいってもいつまでも助けてはもらえないでしょうが。
— そのARØMとカノルスさんの音楽とは特別な関係にあるということでしたよね?音楽をARØMに封入するという離れ業をイルニェシュタンではやってみせてくれました。
ええ。イルニェシュタンの制作から、カノルスの音楽はデータをARØM変換させて、うちの蒸留所の倉庫に樽貯蔵するということを始めました。これによりさらに音に深みが増すことがわかったのです。ほかの人の音楽でそれが可能かはわかりませんが、彼の作る曲とはこの手法だとどうやら相性がいいようです。熟成期を経て、聴き手のもとに送り届けられます。
— こういう提供の仕方は普通の音楽にはないですよね。このあたりは理解されにくいのではないでしょうか?
そうですね。故に聴き手もまた高いレベルの感性を持っている方に限られます。事実、イルニェシュタンは未知の音像世界(と僕らは呼んでいますが)への好奇心が旺盛な方だけが手にしてくれました。
— 一部からは「お高くとまった商売だ」という批判の声もありました。このあたりはどうお考えになるのですか?
カノルスが決めたことなので私はなんとも言えないけれど・・逆に彼は「誰もかれも自分を安売りをしすぎている」とよく言ってますね。今って世の中に音楽があふれていますよね。あふれかえっていると言っていい。そもそもこんなに必要なのかと思うくらい・・。
定額の配信サーヴィスに入ればいくらでも音楽が手に入りますし、ビデオ投稿サイトでもフルでアップロードされているでしょう。それが影響してか、みんなとはいいませんが、聴き手は音楽にお金を支払うことはもはや「もったいないことだ」と思っています。ありがたみなぞ微塵もないのです。正直、私も実際ディスクを買うことが少なくなりました。
— ええ、その風潮はありますね。実際私は仕事柄「買う派」ですが、そうでもない限りは配信サーヴィス一本で満足してしまうかもしれません。音質も普通に満足できるレヴェルですしね。
とはいえ、それでも音楽家にはディスクという存在がないということはありえず、かといってそれだけではやっていけないので配信サーヴィス各種へもリリースする、、、いろんな媒体があるのは良いことでもあるのですが、音楽家が聴いてもらうためにいささか「出かけていきすぎ」になるのはあまりに惨めだとカノルスは私に言ったことがあります。
— なるほど。惨め、ですか。
本気で望んでくれる人の元に届けること。それさえできたら満足だと言っていました。お高くとまっていると言う人は放っておいたらいいと・・。
もっとも私の個人的な意見は、どっちもどっちの気がしてますが(笑)
— 確かにどちらの言い分もメリットがあり、デメリットがある。
そう。実際、カノルスは自分のやり方がうまくいっていないとも認めています。届けるべき人にちゃんと届けられていないこともまた事実なんです。それもあって、続編である「ENCORE(アンコール)」を拡充しつつ、もうちょっとリスナー開拓をしていきたいと考えているようです。
— そうですか。そのあたりはまた改めてカノルスさんご本人に伺うことにいたしましょう。ちなみに、ENCOREは本編と合わせて30曲を提供するという話でしたが、失礼ながら、こんな調子で本当にできるのでしょうか?そのあたり教えてください(笑)
初めて聞いた時は正気かよって思いましたね(笑)それって、一体いつまでかかることやら・・。死ぬまでに終わるかなって?(笑)
まあ、マイペースなカノルスですが、その辺りは決めた以上、しっかり取り組んでもらわないと恰好がつきませんよね。僕も本業がありますが、ちゃんと力添えしますのでご心配なく。
— それを聞いて安心しました!さて、もっと色々お話を聞きたいのですがそろそろお時間となりました。残りのレコーディング頑張っていただきたいと思います。最後にスウェルトさん、このチャンネルを見ている方に一言いただけますか?
はい。今作っている楽曲たちはこれまで以上にあなたを驚かせ、ひたらせ、高みに連れて行ってくれる曲たちだと信じます。イルニェシュタンをお持ちの方には無料でお届けしますので、ぜひ楽しみになさっていてください。
— 私も楽しみにしています。ありがとうございました!
ありがとうございました。
今回は「カノルス」のゲストミュージシャン、セニョル・スウェルト氏にお話しを伺いました。次回はぜひカノルスさんにこの番組に登場いただきたいと思っていますが、なにせ彼はなかなかつかまらないのです・・。でもそこは私が四方八方手を尽くしてご出演してもらいますよ!お愉しみに!