頼む、間に合ってくれ!
そう念じながら彼は螺旋階段を駆け上がる、6F、7F、8F・・。
よし、今回は間に合ったぞ!
屋上へのドアを開けて飛び出し手すりに摑んで身を乗り出す。
空を見上げると、灯台のライトがオーロラヴィジョンを夜空に投影していた。
「・・ルス」
ノイズに乗った音声が耳元に届く。
「・・ら歩き・・続け・・」
夜空に揺蕩(たゆた)うオーロラ。
彼はその光をじっと見つめていた。
すると人の顔のようなものがそのオーロラのなかに浮かんだ。
「私は・・今、巨大・・・の中・・にい・・」
「ここ・・ら・・キミ・・いる星も・・る」
「私が目指す・・・タンステーション」
「新・・な使命・・こにある」
「キミ・・その場・名・・を教え・・う」
「イ・・シュタ・・」
オーロラが激しく波打った。残像が明確になる。
「繰り返す、イルニェシュタン、だ」
「私はそこで待っている」
「歩き続けるんだ。キミらしい城を築け」
「そうすればまた会えるだろう」
声も途絶え、オーロラヴィジョンは徐々に光が薄らぎ、映し出されていた顔も見えなくなった。
楽園だ。ボクの目指す楽園。・・イルニェシュタン。ボクはそこを知っている気がする。
カノルスはそうつぶやいた。
あたりは風が出てきていた。
天気は荒れ模様になってきた。