オーロラヴィジョン /INs°070

頼む、間に合ってくれ!
そう念じながら彼は螺旋階段を駆け上がる、6F、7F、8F・・。

よし、今回は間に合ったぞ!

屋上へのドアを開けて飛び出し手すりに摑んで身を乗り出す。
空を見上げると、灯台のライトがオーロラヴィジョンを夜空に投影していた。

「・・ルス」

ノイズに乗った音声が耳元に届く。

「・・ら歩き・・続け・・」

夜空に揺蕩(たゆた)うオーロラ。
彼はその光をじっと見つめていた。

すると人の顔のようなものがそのオーロラのなかに浮かんだ。

「私は・・今、巨大・・・の中・・にい・・」

「ここ・・ら・・キミ・・いる星も・・る」

「私が目指す・・・タンステーション」

「新・・な使命・・こにある」

「キミ・・その場・名・・を教え・・う」

「イ・・シュタ・・」

オーロラが激しく波打った。残像が明確になる。

「繰り返す、イルニェシュタン、だ」

「私はそこで待っている」

「歩き続けるんだ。キミらしい城を築け」

「そうすればまた会えるだろう」

声も途絶え、オーロラヴィジョンは徐々に光が薄らぎ、映し出されていた顔も見えなくなった。

楽園だ。ボクの目指す楽園。・・イルニェシュタン。ボクはそこを知っている気がする。

カノルスはそうつぶやいた。

あたりは風が出てきていた。
天気は荒れ模様になってきた。