ゆずれないもの、というのがある。
それを手放したら、自分の命すら軽んじているとすら思ってしまう。
直感でそれはダメだと悟る。
今まで僕は自分の勘をときに無視してしまっていた。
だけど、ほとんどの場合、それは信じるべきであったのにと、あとで思った。
同じように、僕の背中にはかつてつばさがあった。
そのつばさは大きくて立派だったが、今や片方が折れてしまっている。
もう飛ぶことは絶望的だった。
目の前に見えるこの川が渡れたなら、最後の美しい園に辿り着けるところまで来ていたというのに、僕はそこへいくことをあきらめなくてはならなかった。川の流れは激しく、歩いて渡ることはできないからだ。
もう一度飛ぶことができたらなら。
そう願いながらずっと立ち尽くしていた。
長い長い年月が流れて。
僕はいまここにいる。
目で見ることはいったんやめてしまおう。
そしていま一度、心の中の瞳を見開こう。
僕には不可能なことなどはないと思えた、
あの幼少の頃に戻るんだ。
僕はもう一回、僕になる。
それは魂の底からマグマのように突き上げて来る衝動が、そうせよと命じる。
そうするよ、今度こそ。
己の信念に従うときだ。