虹が雲の切れ間から緩やかなカーブを描きながら現れて、そっと地上に降り立ったとき、私は居間でコーヒーを飲み終えたところだった。
空になったマグはまだほのかに温かく、コーヒーの残していった温もりを忘れたくないようだった。
ふと、誰かに呼ばれたような予感がして窓際に立った私は、視線の先に虹を滑り台にして降りてくる天使たちの姿をみとめた。ひとりではなく、ふたり、さんにん、・・もっとだ。
徐々に降りてくる人数が増えて、数えきれない。
彼、彼女らは十人十色、顔つきも違えば、性格も異なるようだった。
活発な子、おとなしい子、大人びた子。
纏っている衣装、というかオーラの色もそれぞれ違う。
みんな違うけど、どこか自分を誇らしく思っているような、いい顔。
きっと彼、彼女らはこれからこの世界で暮らすことにしているのだ。
そのために今、宿探しが始まったところに違いない。
みんな美しい。
誰ひとり、のけものにされていい子なんていない。
私はそう思った。
この美しくもあり、醜い世界へ、なぜやってきたのだろうか。
きっとそれはさだめであり、権利でもあるのだろう。
私はひとしきりその光景を眺めたあと、マグを流しにもっていった。
それはまだ、ほのかに温かった。
今日もまた、黄昏が近づいていた。