《SPECIAL》「RenacidA/その生命」インタビュー前編 3/3

fFcanorus × Flamenco Flores 特別対談

インタビュアー:及部紗也加(フラメンコ舞踊教室フローレス主宰)

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収録曲各曲の解説

1.Revelation/高みより

Q.
この曲は以前にインスタグラムやYouTubeでも公開されていたインスト曲ですが、今回の完成ヴァージョンでは新たに歌が加えられました。「Revelation = 啓示」というものが、より明確に押し出された印象をもちました。浮遊感、高揚感のある曲です。とても荘厳なイメージです。
この曲の元々の想い、そして今回あらためてリメイクした想いはいかがでしたか?

A.
ライブに本格的に関わることを決めて、一番最初に提案させてもらったのがこの曲です。「オープニングにこの曲なんてどうですか?」と及部先生にもお伝えしましたよね。

冒頭、ウッドベースがボロンと最初に鳴ったとき、ひらめきが起こって、空気が変わる、みたいな感覚になりませんか。まるで空の上の神様からいきなり呼び止められた、みたいにね。
シンプルで説得力のあるサウンド。だから、このEPの最初に鳴らされるのに最適だなと思ったんです。

楽曲のプロトタイプがすでにあり、ある程度作りたいイメージが固まっていたので、比較的早い段階で本格的に制作に入っていましたが、この時にはもう歌は入れようと思っていて。国歌みたいなメロディラインで、アカペラでも行けそうな感じですよね。

歌詞は録りながら作っていきました。歌いながら頭に浮かんだ詞を乗せていく。その繰り返して仕上げたので、変にひねりもありません。潔く、シンプルに。啓示ですからね。

僕はひねくれた展開にするのがもともと好きなのですが、この曲のように潔く勝負することもできる、というのが我ながら新しい発見です。

ちなみに、この曲は過去に作ってSNSで公開したあと、じわじわと自身が好きになっていった曲です。それで、ウッドベースをギターに置き換えて自分のライブでもやれないか?とアレコレ試していた時期もあったくらいで。歌が入ったことで改めてこの曲をやってみたくなりましたね。

2.月に華、巡る(for FLORES)

Q.
教室のテーマ曲として創られた曲です。私からのオーダーとしては、ピアノが入っていて欲しい・・というだけでした(笑)
この曲は昨年の早い段階で、イメージが出来上がっていたようですが、そのあたりいかがだったでしょうか?タイトルが美しく、フローレスのロゴとリンクしていますね。フラメンコギターの音色も印象的です。

A.
フローレスという教室に僕が抱いたイメージを曲にした感じですね。ロゴを見てタイトルを付けたのです。月がリングのような軌道を描き、花が惑星のように寄り添って廻っている。及部先生と生徒の皆さんの関係を表現しているかのようです。

曲を作った当初、ピアノがメインでブラスセクション(管楽器)が入ってなかったんです。試しにブラスを入れてみたら、ピアノの方がサブ扱いになってしまった(笑)
アシッドジャズみたいに大人の雰囲気で上品、クラブっぽさもあり、しっとりした感じの展開。こういう曲はいままで自分の中にはなかったですね。

3.mugen.(la serenata)

Q.
この曲は、カノルスのバンド時代、ファズ・フォルミダーブルの頃の曲と伺っています。これはどんな想いの曲で、なぜこのタイミングで再び浮上させたのでしょうか?
私は最初、インストのEPをイメージしていたので、歌モノが来たことが意外でした。結果的には、すごく良いEPになることになったのですが(笑)
カノルスの美しい歌とギターの奏でる音の響きが、とてもゆったりとした気持ちになります。レコーディングは一発録りと伺ったのですが、本当?

そして、mugen.の意味は「夢現」と以前にお話を聴きましたが、あらためてタイトルや歌詞、想いなどお聞かせください。

A.
タイミング的にライブの休憩中に使う曲とわかっていたので、それまでの時間、熱いステージを観ていたお客さんにいったんクールダウンしてもらいたいなと。そこからまた気分を変えて第2部へ繋げることを狙っていました。
そのために、緩い歌声があったら良いのではと考え、歌モノをいれることにしたんです。実は、途中までは別のカノルスの歌モノ曲を入れるつもりだったのですが、自身の全部の過去を含めてREBORNすることを考えていたので、バンド時代もその対象だろうと。カノルスになってからはバンド時代の曲はやらないというのを何となく暗黙ルールにしてたところがありますがそれも取っ払って。
このmugen.という曲は10数年前に作った曲だけど、久々に歌いたくなっていた自分がいて、光をあてたくなったのです。たぶんそれはフラメンコギターが手元にやってきたことも関係していると思います。
そしてまた、この曲は丁度ライブ時期と同じく、5月の少しあたたかくなってきた春から夏へ移り変わっていく季節の曲でもあるのでまさにうってつけじゃないか、と。

やってみたらやっぱりこれでいける、と。僕は過去というのは今まで捨ててきた感じがあるんですけど、過去を振り返ることもネガティブな行いではなく、全部の自分を抱きしめてこそ、生まれ変われる、そう思ったんです。

一発録りは本当です!ちょっと試しに録ってみよう・・と自分の部屋の窓の外を見ながらテストとしてやってみたら・・このまま行こうか・・となって。もしも、車がブーンって通ったらやり直しになるところだったけど、幸い通らず(笑)
歌とかってスタジオで録るものじゃないんだ?って思われるかもしれませんが、僕はそのあたり結構緩いですね。音質の良さはあったに越したことはないけど、それはマストではないんです。

それでこのときは、1本のダイナミックマイクでギターとボーカルを録りました。そういうシンプルなセッティングは珍しいことですけど、これで十分と思えたので。

la serenata(セレナーデ)らしい緩いヴォーカルにしたかったので、傍らで歌っているかのようなカチっとしていない雰囲気にしました。作り込んでない感じするでしょう?セレナーデというだけあって、夜に聴いてみたらいいと思います。夜の澄んだ空気や静寂に溶け込んでいくような感覚。雑音もそのまま残してあります。

mugen.は「夢現」の意味で今までは歌っていましたが、新たに「無限」も歌詞に加えることにしました。自分は曲を無尽蔵に作れるんだ、と思ったらこの「無限」の意味もあっていいよな、と。この言葉に変えただけで、すごくポジティブな世界に入っていったような。
それから、歌詞に出てくる「mugen.の庭へは赤茶けた橋を渡る」というのが今になってストンと腑に落ちたんですよ(笑)
赤茶けた橋、つまり錆付いた橋というのは「自分の過去」でもあったのだと。そこを通らなくちゃmugen.にはたどり着けないんだよって。当時、無意識に書いた詞だったんですけどね。過去から答えをもらったような気持ちなんです。

4.ゴーギャンの筆

Q.
曲のイントロを聴くと不思議な感覚になります。私は以前にこの曲でデモヴァージョンを少し聴かせていただいたことがありましたが、今回、完成版として聴かせていただいたら、とても明るい雰囲気に変わってる!という印象でした。それはたぶん、最後のコーラス部分のラララ~♪という歌声が、以前のヴァージョンとは全然違う・・という印象だったせいでしょうか(笑)
そのあたりも含め、曲への想いを教えてください。

A.
おっしゃる通り、最初のヴァージョンとは最終的に雰囲気が変わっていますね。不思議なのですが、作っていくタイミングで、自分の心境の変化があったからでしょうね。これは間違いないと思います。REBORNは音源を作りながら、作ることで、起きていた!(笑)
メロディはどちらかというと悲しい印象だけど、そう聴こえないですよね。悲愴感がなくなっている。ラララというのもね。最初はアアアだったし。過去の自分にはなかったですね(笑)

Q.
タイトルはどうしてゴーギャン?フランスの画家、ポール・ゴーギャンのことでしょうか?

A.
そうです。最初からこれに近いタイトルにしていたのですが理由はなくて、何となく・・でした。
でももうちょっと僕の心の奥底を探ってみると、ゴーギャンという人のことは、サマセット・モームの「月と六ペンス」を読んだ時の印象があったのだと思います。

『月と六ペンス』(つきとろくペンス、The Moon and Sixpence)は、1919年に出版されたサマセット・モームの小説。画家のポール・ゴーギャンをモデルに、絵を描くために安定した生活を捨て、死後に名声を得た人物の生涯を、友人の一人称という視点で書かれている。この小説を書くにあたり、モームは実際にタヒチへ赴き、ゴーギャンの絵が描かれたガラスパネルを手に入れたという。

wikipedia

ゴーギャンはパリを出て異国に行き、絵画を追求するのですが、そういう振り切った人生へのあこがれ、みたいなものが自分にもあるのかなと。家族を置いて、自分がやりたいことをやりたいようにやる。なかなかできないことだし、当然周りに迷惑もかけますよね。
そういうことが僕自身できるかというと、ちょっと難しいだろうなと思うけれど、「生きている実感」を得たい気持ちを、妄想からタイトルにした感じです。

それだけ、今、自分がやっていることがとにかく楽しいんですよ。生きている実感を感じながら作れている。ようやく息を吹き返したから、わかるんです。これがどれだけ素晴らしいことか。

5.RenacidA/その生命

Q.
やってきました!EPのタイトル曲!この曲は、「ものすごく良い曲で『リボーンした!!』という感覚になってもらえるはず!」とかなり早い段階から伺っていました(笑)
最初からカノルスに手ごたえがあった曲なのでは、と思っています。曲を聴かせていただいて、本当に感動して、この曲のエネルギーの高さを身体中で受け止めた感覚があります。

制作が進むごとに曲がロック化してるというお話も伺っていました。
それで、エレキギターを弾いているわけですが、「うまく弾けない・・」のブログでの言葉もありましたよね?真相をお聞きかせください!

A.
この曲は、作った当初はエレキギターは入っていませんでした。今じゃ考えられないんですけどね。でも、ギターが入ったことで曲の方向性がカチッと決まった。この曲は、自分にとって「ギターは剣だった」と改めて悟るきっかけになりました。音楽を始めたきっかけも、ギターを弾けるようになりたい!でしたからね。バンドをやる前から、リッケンバッカーというギターが僕のそばにずっといてくれて、相棒でいてくれて、一緒にREBORNしたよねと。

カノルスの相棒ともいうべきギター、リッケンバッカー

ギターに合わせて周りのアレンジも変えていったんです。
後半のギターフレーズは、かなりやり直して何度も録ったんですけど、結局、一番最初のテイクを採用しました(笑)

エンディングに向かってギターのフレーズで畳みかけていく感じが「まさに今生まれ変わった!」と自分で思えました。作りながら何度も聞き返したけど、毎回こみあげてくるものがあって。なんでしょうね。これまでずっと曲を作ってきて初めてこういう感情を持ちました。そういう意味でこの曲は、自分のことながらカノルスの傑作といってもよくて、これからの活動の起爆剤になってくれるだろうと信じてます。

あと、「ギターが上手く弾けない・・」の言葉は「待ち望まれた結末」の方で・・。結局、弾けなくてアレンジを変えたんですよね。とはいえ、変えたことで逆にいい方向に行ったので良しなのですが。エレキギターを弾くのは久しぶりだったし、レコーディング中は全般的にうまく弾けなかったので、録りながらリハビリしてたという感じでしょうか(笑)

6.待ち望まれた結末

Q.
この曲も去年の9月に朝のルーティンで出来た曲がベースとなって創り上げられたとのこと。アフリカンビートのような多国籍な印象のリズムにウッドベースも入って、すごくカッコ良い曲であると伺っていて、終演時に「エンドロールのような映像とこの音楽はどうでしょうか?」と提案を受けました。

実は私は、静かなビートで、落ち着いた感じを想像していたのですが、曲を聴かせていただいて、ダンサブルというかファッショナブルなイメージであまりにカッコよくて、いい意味で想像を裏切られた感じでした(笑)

この曲はほかの曲とはまた違う特別な感覚があるのですが、カノルスにとってどのような印象ですか?

A.
この曲は作曲してすぐに「カッコいいから使わせてほしい!」と及部先生に伝えていました(笑)
タイトルも最初から決まっていました。立ち込めるダークな雰囲気が、まさに探偵映画とかハードボイルド映画の終わりのようで、フラメンコの赤とか黒というイメージにも合いそうだなとピンときて。エンディングなのでおとなしく終わらせてもよかったのですが、意外性があってもいいなと。

この曲は今後PVを撮りたいなと思っています。いろんな人に聴いてもらいたい。何となく、ワールドワイドでウケるはずだ!それだけの力がある!という風に信じているんです(笑)
及部先生もおっしゃる通り、特別なエネルギーを帯びている曲だと思うんです。

7.せめて私のそばに

Q.
この曲のタイトルがとても印象的です。EPの最後の曲、そして公演の最後の曲となりますが、どんな想いをお持ちですか?
この曲は、さらっとは聞き流せない深い感じがあり、私としては「REBORN、生まれ変わることが簡単ではなかったこと。様々なつらさや苦しみ、孤独を乗り越えてここまできたことを、しみじみと感じている。でもこれからは清々しく進んでいける。」そんな感覚も持ちました。

A.
タイトルは作った時からこのタイトルでした。フローレスを知ってから作ったので、教室の二つ目のテーマ曲・・という感じですね。

僕の印象ですが、フローレスは生徒さんが及部先生のところへ集まり、どこかしら癒されていると思うんです。僕自身もREBORNできた・・と思えるのは及部先生のそういう力が働いたからじゃないかなと思っていて。同じように、みなさんもそばにいることで癒される。フラメンコだけでなく、色々な意味で・・。

他の曲と比べてもこの曲だけは2分足らずと尺がとりわけ短いですが、すべてを言い切れてると思います。曲の展開としても起承転結がありつつ、さっと終わる感じ。このように、僕の曲作りというのは、リピートが少ないです。なんていうか、一筆書きみたいなのが好きなんですよね。

今後の展望

Q.
カノルスは今後、どんな活動をされていくのでしょうか?何か展望はありますか?

A.
EPを作ったばかりですが、ライブが終わったらすでに新しい曲のレコーディングを始めようと思っています。
とにかく今は、立ち止まっていたくないんですよね。これまで水面下でエネルギーをため込んできて、フラメンコライブはまだ終わってませんが、REBORNできた感覚がちゃんと持てたので、ここからようやく動き出せるという感覚です。このフレッシュな気持ちを活かしたいんです。

そして来年2024年には新しいアルバムを作るプランも立てています。何百という曲のリストから選りすぐって作る作品になると思うので我ながらとても楽しみです。新しい曲をリリースするたびに、「これ、同じ人の曲?」と思わせるのが好きです。節操がないというのは僕にとって誉め言葉。きっと飽きないと思いますよ!

あと、音楽を作りながら、いろんな方面のクリエイターの方々とかかわっていきたいですね。もちろん、自分の音楽がきちんと独り立ちしていることが前提になりますが、ネットストアのオープンも企画しているし、そこで展開するアイテムなんかもいろんな作家さんにもかかわってもらってステキな空間にしたいんです。アーティストとアルティザン(職人)をつなぐ、そういうことも以前からやってみたかったことなんです。今回フローレスさんとかかわれたことも、その大きな一歩でしたしね。
5月21日のライブではどんな展開が待っているか、お客様からはどんなリアクションがいただけるか、とても愉しみでなりません!

Q.
これを読んでいらっしゃる皆様へメッセージをどうぞ!

A.
今回のフラメンコライブで僕のことを知ってくださった方も多いと思いますし、このインタビューを読んでくださっているのもEPをすでに聴いてくださった方々だと思います。ありがとうございます。

今回のEP「RenacidA/その生命」は、自分が立ちたかったスタートラインにようやく立てたという実感が持てた作品で、作品自体を作ってすぐにお届けできることがすごくうれしいですね。こういうスピード感で活動をしたことはあまりなかったので・・。

今回、僕の音楽を聴いて、「いいかも!」とちょっとでも思っていただけたなら、きっと今後の活動も面白いと感じていただけると思います。毎日新しい曲を書いていて、自分でも予想もしないような音楽が産まれています。ブログやYouTubeなどでもいろんな試みをしつつ、音楽をお届けしていきますのでそちらもチェックいただけたら嬉しいです。

及部
興味深いお話をありがとうございました!それではライブ後、また第2弾対談をよろしくお願いします!

カノルスのYouTubeには随時新しい音楽と映像がアップされていっています。
ぜひチャンネル登録をしてくださいね!