オークニーのメインランド島を、私はひとり歩いていた。
雲が流れ、急な通り雨が大地を濡らした。
その雨は冷たかったが、私の心の閊えを優しく洗い流す。
私は旅人だ。
歩くことが、今の私の仕事。
そうこうしていると海に出た。スキャパ湾だ。
誰もいなかった。
海とカモメが私を待っていた。
潮風が、ウィスキーで火照った顔を甘く撫でる。
そうだ、すべては変化する。
ここにいる私は、いずれここを去る。
そして次の景色を求めていく。
変わる。変わっていく。
何ものも同じ場所にとどまることはできない。
季節は移り変わっていき、私もまた変わっていく。