ヘリオスの巨岩 – 不思議なフシギなウィスラン事件簿(第1話)

ヘリオスは秋(とき)を待っておる。……それには古代のARØMが鍵となる

このストーリーに寄り添うサウンド

◇主演/イネス

ウィスラン北西の海岸沿い――
断崖の上に立つと、沖に奇妙な形の巨岩が見える。
その岩は古くから「ヘリオス」と呼ばれてきた。神が姿を変えて石になった――そんな言い伝えが、今も漁師のあいだでは囁かれている。

夜明け前、その岩を見ていたひとりの男がいた。蒸留所に勤める青年、イネス。
彼の家は岬にほど近いところにあり、早朝に海で泳ぐのを日課にしていたのだが、その巨岩の近くを泳いだとき、何だかその岩が、”もの言いたげ”に見えたのだった。

その晩、イネスは夢を見た。
ヘリオスの岩に割れ目が入り、中からまばゆい光と共に「目」が開く夢。
目覚めたとき、彼の左腕には火傷のような痕がついていた。
まるで、誰かに「掴まれた手形」ような――。

その日を境に、今度は製造中のARØM樽からときどき奇妙な音を聞くようになった。
それは、誰かが低く唸るような「声」にも、潮が岩にぶつかる「音」にも似ていた。
所長のスウェルトにも尋ねたが「そんなことないだろ」と一蹴されてしまったが・・

イネスは思い出した。
岬で漁師をしていた、自身の祖父。
彼がよく口にしていた言葉が蘇る。

「ヘリオスは秋(とき)を待っておる。彼(か)が覚醒すれば、海に沈む海底城塞を浮上させる手助けをするだろう。月と太陽の光が交わって指し示す座標に従って……それには古代のARØMが鍵となる」

祖父はシャーマンとしても皆から慕われていて、地域の祭事では頼りにされる存在だった。もう亡くなって何年も経つが・・。

断崖からヘリオス岩を見つめるイネスの背に、風が吹く。
その風には、潮風に混じって、ARØMの香りも少し含まれていた。

ストーリーメモ:
金曜日は、ウィスランの民話や神話、不思議な出来事にフォーカス!蒸留所で働いている青年・イネスの家は、代々漁師をして生計を立ててきましたが、祖父はスピリチュアルな能力を有していたため、神事ではシャーマンとしての役割も果たしていました。彼はすでに亡くなってしまい、イネスの父にはまったくその能力がなかったため神官の血は途絶えたと思われていたのですが、どうやらその力がイネス青年に引き継がれているようです。
彼が幼少の頃から見ていた美しきヌドリアの海。その海は時に、激しい波濤を引き起こしますが、そこに厳然と悠然と佇む巨岩・ヘリオス。その巨岩はこの頃何らかのエネルギーを、イネスに送ってきているようです。

次回予告
ARØM樽からときどき奇妙な音を聞くようになったイネス。
彼にさらなる不思議な出来事が起こり始めます。
ヘリオスは彼に何を伝えたいのか?
不思議なフシギなウィスラン事件簿第2話
来週も、お楽しみに!