宮参り、白い巫女/INs°003

境内に入ると誰もいなくて、高い木々が優しく此処を護っていた。
木漏れ日だけが立ち入ることをゆるされ、間接照明のように宮を照らし出す。

宮の中から歌声が聴こえてくる。
姿は見えないが少女たちのようだ。
その歌声はまるで、無数の白い羽が舞い落ちてくるかのよう。

境内の中央で焔が燈されている。立ち上るその煙は、モスグリーンに見える。

あたりには誰もいなかった。

人知れず、厳かに、宮の中で儀式は執り行われているのだ。

私はそっと手を合わせ、そのまま音を立てぬように立ち去った。